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2020年10月21日

おとぎばなし

あるところに
明るく楽しくてとても優しい気遣いの出来る男の子がいました

男の子はいつも笑顔で
頑張っていました
でも男の子のまわりは
そんな優しさと頑張りをちゃんと見てくれず
当たり前のようにその優しさを受け流し
利用したり、ないがしろにしたり
それでも男の子はみんなの笑顔のため
疲れていたけど頑張りました
自分もお腹がすいていたけど
自分の分の食べ物をみんなに分けたり
喉は乾いて仕方なかったけど我慢して
みんなの為の水汲みをしていました

そんなある日
ひとりの老いた農夫と出会います

その老いた農夫は
果樹園をしていて、長年
理想の果樹を作るために試行錯誤し
改良に改良を重ねてひとつの完璧な果樹を作る研究をしていました
それはそれは苦労をして
時には人には言えない悪いことをしてでも、その果樹の完成に生涯を捧げていました

男の子は、人には言えない悪いことをした老いた農夫を知っていました
その長年の苦労も
それでも男の子は、そんな老いた農夫にも
笑顔で優しく沢山お世話をしました

そんなある日、長年の研究が実を結ぶ
あの完璧な果樹が
とうとう完成しました

老いた農夫は
涙を流して喜びました。
これを王様に報告しようと
大急ぎで馬車を走らせました


その日、男の子はとても疲れていました
頑張って頑張ったけど
誰も男の子に声をかけてくれません
男の子はとてもお腹がすいていて
喉はカラカラ
男の子はフラフラになりながら歩いていました
みんな見てみぬフリ
誰も男の子に声をかけません
足がもつれ、目の前が真っ白になり
もう限界
とうとうひとつの木の下に倒れてしまいました
もうろうとしながら木を見上げると
とても瑞々しく、今まで嗅いだことのないような甘美な香りのする果実がなっていました
あぁ、あの老いた農夫の果樹だ
なんて美味しそうなんだ
もう限界、少しくらい食べたって
あんなにお世話したんだ
許してくれるだろう
男の子はその果実に手を伸ばします
カプリッ…
うわぁ!なんて美味しいんだ!!
男の子はあまりの美味しさに無我夢中で食べすすめます
気がつけば果樹のすべての実を食べつくしてしまいました

そこへ
王様と村人達と老いた農夫が戻ってきました

「な、な、何をしているんだ!」

老いた農夫は
無残にも食べ散らかされた理想の果樹を見て、聞いたことのない叫び声で男の子につかみかかり殺してしまいそうなほど殴りました

村人も王様も男の子を責めます

この国では盗みは重罪です

男の子は、ただお腹がすいて限界でした。

でも
この国では盗みは重罪でした


老いた農夫は、人には言えない悪いこともしました


でも
この国では盗みは重罪でした








Posted by 痛 風子 at 23:49│Comments(0)
 
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